日本銀行が利上げしても円安を止められない理由
筆者は前に、中東原油取引の公定通貨が米ドルから元シフトが始まっていると書きましたが、ここにきてアジア向け原油価格ひき下げが発表され、アラブライト原油がオマーンドバイ産比で1バレルで5月9ドル35セント高、6月4ドル40セント高と上がっていたためですが、中国のロックダウン長期化問題で需要見通し不透明になったのが影響かと日経では報じましたが、元建て原油販売価格が不透明化したからと言った方が分かり易いでしょう。
原油高の影響を受ける日本企業株価はというと、年初来騰落率 日経平均−6% 金属製品−15% サービス−15% 精密機器−17%、GW中でも在庫不足が叫ばれた電気機器は、19年37% 20年22% 21年22% 22年−18%、株価下落は米金利上昇が一因と言われる中でも、今期増益見込む電気企業は多いと言われ、今後の国内需要景気の動向は、日本の電機企業の巻き返しが産業復活のカギと見られています。
さて、それでは気になるのが日本企業株価に大きな影響を与えている、ドル円の高騰ですが、先週あたりから概ね130円台前後を推移、米企業3指数株価は頭打ちになりつつある、日本企業が日本銀行の金利据え置きで業績回復しつつあるのは、明るい兆しだとうたう報道や期待感が報道されます。
ただ、5月5日時点で1ドル=129円台にまで一時上昇したドル円レート、ドル以外の通貨に対しても円は下落の様相を呈していますが、日本銀行は金融緩和継続の姿勢を崩しておらず、仮に日銀が利上げしても現在の円安を止めることは難しいだろうと言われていました。
金融緩和継続の姿勢を変えない日本銀行の行動は、3月末に125円台まで急騰後、いったん落ち着いた相場のままならまだしも、FOMC(米連邦公開市場委員会)メンバーによるタカ派的な発言が相次ぐなかで、米国10年債利回りが3%に向けて上昇すると、125円レベルをあっさりと上抜き、130円付近まで上昇してした、こうなると流石に動くと思われた日銀は、微動だにしませんでした。
既にECB(欧州中央銀行)でさえ、年内利上げを示唆する声が強まるなか、ユーロ円も140円近くまで値を上げており、正に円が独歩安となる様相に、FOMCと日銀、米日中央銀行の我慢比べの様相とも言い換えられそうな一面を見せています。
海外の多くの中央銀行が利上げに向かうなかで、日本だけが金融緩和政策を継続することが円安の最大のよりどころとされ、他方、円安が我が国の家計の購買力を大きく損なうと思惑の高まりから、日銀は金融緩和政策を見直し、「悪い円安」を阻止すべきであるとの声が強まってきた。
このようななか、日銀の黒田東彦総裁が「円安は、日本経済にとってプラスの効果の方が大きい」という姿勢を崩さず、日銀も特定の利回りで国債を無制限に一定期間買い入れる「連続指し値オペ」をオファーし続けることから、一層日銀に対する風当たりが強くなっているのだが、日銀は「悪い円安」阻止のために本当に利上げを行うべきなのだろうか。
しかし一方で日銀が利上げしても、円安の進行を食い止めることはできないと考えている分析も存在しているようです、日本銀行がたとえ利上げをしても円安を止められない理由とはなんでしょうか、色んな意見が考えられますが、その一つには既にアメリカのインフレ歩調は安定期に入っており、アメリカ経済に歩調を合わせている日本にとって、今更日本が調整を量っても大きな転機にならないと見られるからです。
つまり、日本経済は大きなグローバル経済の渦中に置かれたことで、既にアメリカ経済一辺倒では無くなりつつあるのでは無いかという見方です、これは日本の経済成長の基準がこれまでのアメリカとは別に、中国経済の影響を受けだす過渡期である可能性があると、筆者は考えました、考えてみれば日本企業特に機械輸出製造業の多くが中国に長らく依存してきたことが大きく、アメリカのように自国生産とのバランスを考える政策とは、徐々に乖離の傾向が大きくなっているのではないか、という見方です。
先週末分のニュースでは、人民元の変調について景気悪化懸念強まり、ドル人民元6、4ドル→6、7ドルと1年かけてあげた幅を一気に無くしたと、急速な下落を報じています、それを受け中国人民銀行は25日、国内銀行に対する外貨預金準備率を、5月15日から8%に引き下げると発表しました、人民元円では20、17円と人民元高止まりが続いています。
中国の貿易黒字は過去最大規模に拡大しており、直近5年で2000→4000億元、ドル300→600億ドルに、日本では中国政府による今後のゼロコロナ政策の堅持予想を、微修正63%それ以外は以外堅持継続を予想しているようです、もしかしたら日本銀行が利上げしない理由は、アメリカの動向よりもむしろ中国動向を注視しているのかもしれません。
ここまでは筆者独自の分析ですが、一般的には別の見方をしているかもしれませんが、いずれにしても日銀が今後金利調整をするのかしないのか、未だ持って未知数となっている”動かない超常識措置”を継続していることが、グローバル社会を生き抜くべく、日本の今後向かう方向性が、明らかに変わろうとしていると見た方が、むしろ自然だと見られるのです。
今日本政府は、岸田総理主導で親米・親グローバル社会の切り込み番長をするかのような、積極外交でバイデンが大統領権限一杯の予算をウクライナへの経済武器供与に回す、異例(異常)を穴埋めするかのような行動に突き進んでいますが、これがアメリカ傀儡の日本の置かれている立場であると同時に、中露など新しい覇権勢力への影響力への金融的準備として、その転換タイミングを図っているのかもしれません。