良いものを安く売っても良いのか?
国内でいつのまにか言われるようになった「良いものを安く提供する」というキャッチフレーズ、かつて流行った「お客様は神様です」が、客を絶対的立場だと誤解を生み、モンスタークレーマーが派生してしまいました。
今回は、良いものつまり人件費や製造コストをかけて作ったものは、本来価格を下げることは企業運営上有り得ないことを、キャッチに利用したことで何が起きたのかを考えますが、地方の商業を疲弊させた元凶かもしれないのです。
都市・地方に限らず消費者側にとって品質の良いものがお値打ちに買えるのは、一見嬉しいことですが、本来そんな美味しい話はあり得なかったことですが、実際には実現できたことになっています、これはどういうことでしょうか。
これはお解りだと思いますが、製品コストの最も割合を示す人件費を減らせたことで、そのために、企業は人件費高の国内生産を、当時人件費の低かった中国へ製造ラインを移したことで、大きくコスパ改善に成功したわけです。
そもそもこの流れを始めた大企業も、数年から中国人件費の高騰と言う形で、中国経済に貢献はしたものの、さらなる低人件費国を探さなければ、このスローガンを維持できなくなっています。
その回避方法は、これ以上理想的な生産拠点を探すのには限界が見えていますから、そろそろ方向転換を進めている大手が増えているようで「良いものはそれなりに高く」というまっとうな方向へ進めると同時に社内の管理コストでウエイトを占める人件費を下げるという二方向で解決を進めているようです。
「良いものを安く提供する」を続けてこれた期間は、一見消費者よりの行動に見えた者の、実際は企業側の利益率を上げる方便でしかありませんでした、実際に製造ラインは中国側で揃っていて、その分国内の設備を売却すれば良かったわけですし、人件費は丸々下げられた上に、実際品質は従来より若干上がった程度でした。
これによって大手のような大型投資が可能な企業であるほど、利益率は格段に上がった分、国内生産体制は一気に減ってしまったわけで、多くの失業者・転職者を生んだ現況になりました、これが平成の低デフレ経済の根源です。
その後、タイミング的にアメリカが中国・欧州・日本から利益や技術の流出が続いて、トランプ大統領時代に海外企業の国内規制を高め、内需拡大体制を強化し出したことで、結局は「良いものはそれなりに高く」という当たり前の解釈に戻ると期待されます。
問題は、現状国内景気はウイルス起因の影響がありながらも、消費行動はこの流れに理解がされ、高くても良いものは売れる傾向にあるのですが、今後例年通りの気象要因やウイルス要因の悪化で消費が冷え込んだ時に、人件費削減による給料低下によっては、この当たり前が再度ネックになる可能性はあります。
こうした商環境のモードを決めるスローガンは細分化され、個々の企業商品のキャッチを決定する基本になるものであって、これは一見消費者行動の結果出てくるように見えますが、商行動の設計図のようなもので、消費者はこのモードに誘引されるようにできています。
筆者が問題にしたいのは、このモード・流行によって、都市部の景気行動を中心にした製品や販売計画が起きることで、地方の景気行動と乖離する琴があった場合に、地方の景気を悪くする結果になりやすいという懸念です。
アベノミクスに柱の一つだった地方創生が、結果的に失敗したと言う風潮が囁かれるのは、実質上の町おこしは地方行政に一任され、中央行政が東京都景気の強さにコントロールできなかったツケと、企業もそれに習って人件費削減と、マーケット開発や商品開発にコストを使った割には効果を出せなかったことにあると思っています。
人口比で言えば分散はしていても地方の比が高いのは誰が見ても明らかなのに、企業側はコスト分散を恐れてマーケットの対象を、完全に都市部に集中させたことは、結局コストパフォーマンス過剰重視した結果のツケだったのかもしれません。