くろま流 × NAGOYA式 ブログ

東海・名古屋からまちおこしヒント探し始めて、結局国際経済のしくみに行きついた

円安が止まない…それでも金融緩和を続ける日銀の思惑とは

7月22日 、日銀は物価見通し2、3%にし大規模緩和策を維持すると発表しました、22年度物価上昇率見通し2、3%に上方修正(4月:1、9%)黒田総裁がアベノミクスで掲げた目標CPI2%に達することにはなるが、経済の不確実性は高いとし緩和的な金融緩和維持する見通しで、黒田総裁は企業収益が伸び、賃金が上昇する中で物価も上昇していく好循環に今なっているかというとまだなっていないとし、日本銀行として引き続きしっかりと経済を支えるために、金融緩和続けていく必要あると語った。

(その中で総裁は、”円安”というより”ドル高”と見ている)最近のような急速な円安進行は、先行き不確実性を高め、企業による事業計画の策定を困難にするなど、経済のマイナスであり望ましくない、政府とも緊密に連携しつつ引き続き為替市場の動向や、その経済 物価への影響を十分注視していきたいと述べている。※()内はなぜかモーサテでのニュースで省かれていた箇所で、これが意味を持つとすれば、日銀は日本の金利が正常であって、アメリカが世界を煽っていると見ている節があります。

 

さて、米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備理事会)がバランスシートの縮小(金融正常化)を進めており、毎日ニュースで報道されます、一方日銀は金融正常化どころか大規模な緩和策を継続中であり、両行のバランスシートには今後、大きな違いが生じることになるとして、日銀は大丈夫なかと殆どの経済評論家は声を揃えます。

それはそうでしょう、FRBは2022年6月から量的引き締め(QT)を開始し始め、量的引き締めは中央銀行保有する国債などの資産を売却し、市中から資金を回収するオペレーションのことを指すし、3.4兆ドルの資金が市場から消えることを意味するからです、そりゃ大口投資家は必死になって株を買いあさり、利をあげた時点で売り払おうとしていますから。

 

そのアメリカ市場に追いつけとばかりに、各国の中央銀行リーマンショック以降、金融危機に対応するため、積極的に国債などの資産を買い入れ、市中に大量のマネーを供給する量的緩和策を実施してきました、しかしアメリカの中央銀行総元締めFRBは、金融緩和を止めるどころか金利を上げ続けています。

その結果、米国では量的緩和策が効果を発揮し、経済は成長軌道に戻ったが、量的緩和策には中央銀行のバランスシートが肥大化するリスクがあるとされ、一定の効果が得られたところで金融政策を元の状態に戻す、金融正常化(いわゆる出口戦略)が必要とされていて、肥大化したバランスシートを縮小させる量的引き締めで縮小するものだそうです。

 

米国の場合、金融正常化を進めると株が買われ始め、物価上昇を招きインフレ率も跳ね上がりました、本来量的引き締での正常化とはインフレ抑制にするものですが、膨らんじゃったものだからともかく量的引き締めをスタート、そうすれば中央銀行保有する国債などの資産が売却され、市場からは大量の資金が回収され、量的緩和策とは逆の流れで市中に出回るマネーの量が大幅に減少するとされますが、現状は米株価は頭打ちをはじめたばかりで、その間利上げを実行した他国の中央銀行によって、後追いになっていますが物価高は何もしない日本と同様止まりません。

FRBは、現在約8.8兆ドルの資産(約1223兆円)を持っているとされ、このうち国債などの債券は5.8兆ドルとなっており、FRBは毎月最大で950億ドルのペースで資産を縮小する予定ですが、仮にこのペースでのオペレーションが続くと、3年間で約3.4兆ドルの資金が市場から回収…消えることになるということです、各国の中央銀行はこの被害をできるだけ減らそうと、金利アメリカにあわせているのですが、途上国ほどその影響は計り知れないでしょうね。

 

リーマンショック直後、約1兆ドルだったFRBのマネタリーベースは、現在では6兆ドル程度まで膨れ上がっており、約5兆ドルの金額が市中に提供された計算で、もしそのうち3.4兆ドルのマネーが回収されれば、マネタリーベース増加分の多くが消滅することになり、株式市場には大きな影響が及ぶ、ということで市場が神経質になっているのです。

つまり、一連の動きは金利の上昇とセットになっていて、一連の正常化が行き過ぎた場合、バランスシートの縮小とインフレ抑制は実現できても、景気が失速するリスクもあると言いたいのです、現状からは当面米国にとってインフレ抑制は最優先のスタンスで、バイデン政権は資本家の資産保護優先するので、景気を犠牲にしても金融正常化を進めるでしょう、一部からFRBの対応は現状でさえ、甘すぎるとの指摘が出ているらしく、量的引き締めは粛々と実施されるでしょうから、米国民は暫く物価高に振り回されるでしょう。

 

こうした動きとは対照的なのが日本の中央銀行”日銀”です、日銀は現状約540兆円の国債保有、日銀当座預金には大量のマネーが積み上がっています、しかしFRBとは異なり日銀は現時点でも、原則大規模緩和策を継続しており、加えて長期金利を0.25パーセント以下に抑える指値オペも実施しており、日銀は0.25%を死守するため、国債の買い入れ額を増やしているので、出口を探るどころかさらに緩和を加速すると指摘されています。

先にFRBの総資産額は約1223兆円と書きましたが、日銀の総資産額は約730兆円で相対的には日銀の方が少ない、一方日本と米国とではGDP国内総生産)に5倍以上の差があり、GDPの規模が同じと仮定すると、日銀のバランスシートは米国より3倍も肥大化していることになり、日銀はFRBと比較して巨額の国債を抱え込み、仮に正常化するにしても気が遠くなるような道のりだ、というのが大方の関係者の見方です。

 

関係者は、金利と債券価格は逆方向の動きを示すので、金利が上がるということは債券価格が下落することとイコールであり、金利が上がると中央銀行保有する国債の価格も下落することを意味しており、金融政策を正常化すれば、必然的に金利は上昇することになると見ています。

一方で日銀は、保有する国債について簿価評価を行っており、国債の価格が理論的に下落したからといって、直接的に損失を計上する必要はないとし、国債価格が大幅に下落すれば、実質的に日銀が債務超過に転落する可能性が高く、少なくとも海外市場はそう認識するだろうという見立てです。

 

ただ、金利の大幅な上昇によって中央銀行債務超過に陥る可能性はFRBも同じでも、米国と日本とでは決定的な違い”政府の財政余力”があるとも言います、仮に中央銀行が実質的に債務超過に陥っても、中央銀行が増資で損失分をカバーできれば、通貨の信認が損なわれない、米政府には十分な財政余力があり、税を投入することで債務超過をカバーできるという計算が成り立っているので、投資家はストレステストの結果に沿って、過度な引き上げになっていると考えられます。

 

では日本の場合?…そうはいかない可能性が高いと指摘します、日本政府の債務は世界でも突出しているとされており、仮に日銀が債務超過に陥った場合、日本政府に日銀を救済する力はなく、安倍元首相が亡くなる直前「日銀は政府の子会社である」と発言して物議を醸したように、現時点の日銀法では日銀の独立性が明示されているので、彼らは日銀が政府の子会社かどうかという結論を重要視しません。

むしろ「日銀が政府の子会社」なら、状況はさらに深刻と言います、金融市場では政府と中央銀行は一体と見なされ、両者の信用がバラバラに評価されることはなく、もし安倍氏の主張する通り、日銀が政府の子会社ならば、日銀の健全性はさらに危ういと言われかねないと言うのです、理由は当然親会社である日本政府の財政が日銀の信用が直結するからです。

 

以前、日銀と政府を一体として考えれば諸問題が解決するという、いわゆる統合政府論が喧伝されたことにも違和感を唱えます、両者が一体であることを前提に、信用低下が危惧されているからと…しかしこれはMMT理論を知ればそうでは無いことはお分かりですね、さらに一部の論者が日銀の信用が著しく低下して、日本円が紙くずになる可能性もあると警告している背景に、彼らがおカネの発行される仕組みを理解していないことは明らかで、日銀の信用度は毀損され、以前として比較して日銀(あるいは日本円)の信用が下がっているのは間違いなく、円安の要因になっている可能性は極めて高いと、無知な者を脅して増税の理由にするのは見え透いています。

 

先のように、日銀は低金利を維持する必要性から、大規模緩和策を継続している以上、日米の中央銀行のバランスシートの違いで、相対的に日本円の価値は下がりやすく、現在の政策が変更されない限り、日銀の信用低下は過度な円安という形で、顕在化する可能性が高いだろうと警告をするのです。

しかし、日本の債券国家としての信用は、世界的にも一部ではアメリカを上回っているとも謂れ、日本経済は意図的に永年低金利を維持した状況であるのは、筆者を含め問題視する緊縮財政を見れば明らかです、確かに金利の引き上げタイミングは難しいですが、敢えて海外に金融正常化の方向性をハッキリ見せない姿勢は、意図的で中央銀行でも日本だけです、はたしてこの戦略が円安リスクを悪化させるのか、日本の資産力を盾にした兵糧作戦は成功するか、それは安倍元首相が言われた通り、日銀は政府の子会社である事で、政府が日銀と連携しながら、2%超えのGDPを今後どの様に目標どおり上げていくかに掛かっています。