高齢化社会の年金問題だけでは見えない、根本問題の解決策
少子化による継承者不足の現状で、今どのような状態かを前に書きましたが、少子化=高齢化社会と言えるように不可分な関係から見て、今回は高齢化による深刻な課題を見ます。
ニュースなどで取り上げられる高齢化問題は、年金不足とか老後の生活や医療に関する危機がほとんどですが、これらを中心にして考えてしまうと、必ず増税必須とか社会福祉の充実とかの追求にばかり目が行きがちですが、それでいいのでしょうか。
この問題への視点は、あくまで高齢者側の視点であり、これを中心に問題解決を進めても、これから日本を引き継ぐ次世代の若手世代には説得力がありません、日本は多数決主義を珍重しますが、ここでも比率の多い高齢者優先の傾向が見られます。
高齢者がこの先も増加し、国の財政を圧迫する課題を解決するためには、消費よりも生産を高める必要があるにもかかわらず、日本のGDP増加率はここ30年程は横ばいです、これは前にも書いたように先進国では日本だけです。
GDPが上昇しない理由はあげればキリがありませんが、景気が好調でもそうでなくとも変化が無いのはかなり特殊と考えられますし、この事実が示すのは生産した分を何かが消費していることを裏付けているわけです。
売り上げた利益がどこに行っているのかというと、普通に考えて内部留保されていると考えられ、事実金利の低下に伴う企業投資はデフレも手伝って消極的でしたし、その分内部留保を優先させた形跡があります。
つまり生産で上げた経済活性化の源であるマネーが回っていないために、GDPは停滞しているというおかしな状態で、この膠着状態を動かすため安倍政権時に、日銀主導で銀行の金利引き下げと積極融資を進めようとしますが、コロナ禍や大きな災害で多くの企業業績が落ち込んで、内部留保を解放できていません。
想定外のリスクに意識が行きがちな企業は、高齢または金属年数の高い雇用者だけでなく、実用的でない未成熟な若手社員を非正規化やリストラし、ますます内部留保と人事凍結に走る悪習を加速させています。
本来なら時代の潮流に乗るべく企業システムをDXへの対応に設備投資すべきですが、海外の主力企業に比べて消極的で、こうした日本人独特のマネー管理意識の保守性が、GDP成長を止める選択をしたとも考えられます。
安倍政権に引き続き、新政権の菅内閣でも世界トレンドであるSDGsへの参画を積極的に打ち出し、企業側の投資を促していますがコロナ禍で業績低迷企業の立て直しが優先され、見通しは来年以降を待たなくてはならなくなりました。
その状況の中で、人材投資も消極的でむしろリストラありきの企業が増加、今後しばらく溜め込まれた利益の、前向きな放出はないように見えますので、この間にどれだけの人材が迷走するかによって、ますます海外へ優秀な人材が流れていかないか懸念されます。
ベテランと言われる企業のノウハウを蓄積された人材が、中国政府主導の人材狩りの対象にされるのは明らかで、条件の良い中国企業へ優秀な日本知財の流出は、ますます国力弱体化を加速させていくでしょう。
それ以外のあぶれた人材が職にありつけず、社会福祉費の負担を高めていくことで、より理想的な福祉対策への予算分配は難しくなり、公的福祉を補うために民間企業による福祉補完ビジネスへのシフトが起きるでしょう。
資本主義社会では、こうした流れは一般的ですが、これまで公的保護が手厚過ぎた日本の社会保証制度を好む国民嗜好がどこまで満たされるか、今後政府は国の補償を民間サービスとの連携やバランスを見ながら徐々に、業務委託を進めることになるのではないでしょうか。
これは単に筆者の個人的予測ではなく、事実すでにこのビジネスシフトを実行した竹中平蔵氏の前例を見れば、容易に導かれることであり、財務省主導の行政にあってこれをコントロールできない歴代政府である以上、民間委譲で財政をスリム化する動きは避けられないでしょう。
国内メディアは、ステレオタイプに冒頭のスタンスに限定してしか、問題を取り上げませんが、実際はそれだけを見て論議しても、この問題は絶対に解決しないことを、知ってもらいたいと思い、今回はこのテーマを深掘りました。