地域の人材育成、青田買いの限界と同産業の連携で生き残り
地域の産業は、それぞれ特徴があって、農業・林業・漁業・工業・商業などの中で、特徴が出るものですが、日本が本来得意としていた自然と関わって、自然と共生する産業、今回は林業について触れます。
山で人工林を木を育てて、産業とする林業の歴史は日本では古く、先立て記事にしました、今年岐阜県で行われた植樹祭で皇太子が参加されるほど、日本は太古から木と共に生き生業にしてきたのです。
時代と共に日本の主産業は変わっていきましたが、今でも日本には豊かな森があり、たくさんの人工木が育っているいるのもかかわらず、輸入産に押されてしまったのは残念としか言えません。
林業は、東海三県では岐阜県や三重県などが主になりますが、愛知県にも三河の山間部には豊富な林業資源があるにはあるのですが、他県に漏れず苦戦が続いているようで、さらに人材不足はそれに輪をかけています。
各企業では、特に中小企業での人材確保を推し進める動きは盛んですが、どの業界でも絶対的な人口現象によって、青田刈りは過去のモノとしても、従来の様な青田買い的な方法も、分母そのものが減っていて限界です。
人手不足を感じる中小企業 50.2%
≫中小企業が求める人材の統計
一定キャリアを積んだミドル:67.9%
高卒(新卒):40%超え
大卒(新卒):32%程度(52.5%が中小で働く意志あり)
管理経験者(シニア):12%程度
その他:19%程度
※出所:日本商工会議所「人手不足への対応に関する調査」より
上記より、
中小企業の即戦力ニーズ対し、大卒(新卒)52.5%が中小ラブコール
新規採用の際の需要と供給のミスマッチは、林業に関わらず大手企業に流れる傾向がこのまま止まらないと、日本の業種多様性が心配されるところです。
こうなると相当難しくはなるでしょうが、政府が適切に人材育成で将来投資する姿勢を、地方創生の取り組みの中で積極的に推し進めて欲しいです。
こうした背景の中でも政府ではなくその動きは、生き残ろうとする産業の弱点を地域ごとではなく、地域に関わらない同業で提携することで、海外のそれとの競争力を高めようとする動きも出ているようです。
市域の7割を森林が占める豊田市は、林業会社「西垣林業」(奈良県桜井市)と手を組み、県内最大の製材工場を建設する。荒れた山林に手を入れ、課題だった間伐材の有効利用を図るのがねらい。基礎自治体が独自に製材工場を誘致するケースは珍しいという。
市森林課によると、東海3県でも屈指の規模となる製材工場は、同市御船町の市有地に建設される。造成は市がし、工場を建設する同社には市から補助金を交付する。年に3万~5万立方メートルの原木を加工する能力を誇り、2018年度の操業を目指している。
同社によると、原木となるスギやヒノキは同市や県内を中心に集め、主に住宅用建材やチップ材などに加工するという。従業員は23人でスタートする予定で、17人は地元から採用する。基本的には国産材を100%使用する方針で、西垣社長は「国産材の価値は注目されており、将来的には『豊田ウッド』というブランドにして販売したい」と意気込む。
同市にとって、人工林の手入れは喫緊の課題だ。東海豪雨では市内を流れる矢作川の上流域を中心に、人工林が根こそぎ流される「沢抜け」が大量に発生。矢作ダムに大量の流木が押し寄せ、下流の市中心部も未曽有の被害に見舞われる寸前だった。「山の手入れ」と「間伐材の有効利用」を一気に解消しようと検討した結果が、大規模製材工場の誘致だった。
市は6月、業者を公募したところ、県内外から3社が名乗りを上げた。製材施設運営のノウハウを持ち、県内や近隣での販売戦略に明るい同社が、原木の地産地消を掲げた同市の方向性とマッチし、今回の誘致につながったという。
10月22日に市役所であった調印式で太田稔彦市長は「15年前の東海豪雨では、山の荒廃が問題になった。市民の命を守るうえでも木材の有効利用に期待したい」と話した。一方、課題もある。製材工場が完成しても、山から原木を切り出す組織が、市内には「豊田森林組合」しかないという。
同市の原田裕保産業部長は「今後は伐採作業員の確保と育成が必須。森林組合や西垣林業と様々な方策を考えていきたい」と話した。(安田琢典)
現在最も盛んになっている産業形態をそのまま真似れば、その地域は幸せになるものではありませんが、その地域の地場産業をいかに現代の市場に合わせていけるかは、職人気質の傾向の高い日本人のここ近年の大きなハードルになっているようです。
こだわりが強い分、秀逸な品質の製品を造る事にこだわるその気質はこれからも引き継がなければならない、重要な事ではありますが、あまりにそこにこだわる一方で、チャンスを見逃しがちな不器用さは残念ではあります。
今、海外進出者や積極的な新しい商業的なノウハウを持った人材が幸いなことにようやく増えてきているようですが、そういったノウハウをもったコーディネーターの活躍は、今すぐにも欲しい人材です。
点と点を繋ぐように、繋いで線や面にまとめていく才能がこれから増える女性の中からも現れてくるでしょう。
もう、頑固なだけでは良いモノを世に問う事すら出来ないところまで来ている事を忘れてはならないのです。
ここまで思うのは、名古屋城は改修にも出てきた、巨大木造建築を増築する木造資源や、それを作り上げる職人の減少によって、世界に誇るべき技や知識が消えたり、やたらコストがかかったりする現実からも、実感できるからです。
伝える側も高齢化して、次の世代に告げるかどうか限界の時期にきている時期に、ここでお金をかけずして、日本の産業の明日は心もとないものになるでしょう。