燃費よりいいモノ?! 軽自動車ニーズの変化
私たちの住む国内でのガソリン自動車の普及は、今でも日本産業の主力のひとつを担った欠かせない産業です。その発展に伴って人口わずか一億人の国内市場において、8社以上もの自動車メーカーがしのぎを削ってきた経緯があります。
その自動車販売合戦の中で、消費者の購買動機のひとつには燃費至上主義が顕著にありましたが、その燃費至上主義にピリオドを打とうとするメーカーの動きが見られるようになっているようです。
ダイハツ「ミライース」が燃費競争やめた理由 | 自動車 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
自家用車がバカ売れした時代の中で育った世代である筆者にとっては、燃費を重要視しなくなるこの企業の動きには、少なからず違和感を覚えたこともあって、触れてみたいと思います。
そもそも国内の自動車販売は今後下火の傾向にある中で、景気上向きによる付加価値の傾向が変わってきたせいもあるかもしれませんし、大きなきっかけとしては三菱自動車や独フォルクスワーゲン社の燃費詐称事件は、その変化に大きく影響したのは想像に堅くありません。
それらを踏まえた上での今回のD社の判断が、ユーザーにどう評価されるかはもう少し時間が必要ですが、筆者が気になったのはどのプロモーション記事にも揃って言い訳がましいメーカー目線の論理が前置きされているのはいかがなものかと感じた次第です。
新車発表時点では、かなり多くのメディアがニュースするためメーカー広報をベースにした情報発信は似通ってしまいますが、漏れなく含まれるコメントがネガティブすぎて、逆にメーカーの印象を悪くしているのです。
かつて、新商品のプロモーションがこれ程マイナス面を全面に押し出した例は珍しいほどで、その代償に安全性や快適さを提案したとしていますが、結局満足のいくオプション選択肢は高グレードの車種だけですし、当然値段も跳ね上がります。
しかも本来燃費と低コストが最大のメリットであるはずの軽自動車にあって、このメーカーのスタンスは、一部の選択肢としてならまだしも、高付加価値グレードがイチオシの姿勢には、疑問を残す方も少なくないでしょう。
記事を読み進めると、(経済的余裕のある)高齢者が運転しやすいサイズの軽自動車へ乗り換えに際して、普通車と違和感のない乗り心地と快適性のため、燃費を諦めたとなっていますが、筆者はこのような弱音を吐く日本企業の低迷を嘆くしかありません。
むしろ、販売チャンネルの限定されるものの、孤軍奮闘する同軽自動車大手スズキ自動車の方が、低燃費と低価格で割り切っている分理解されやすい気がします。
業務提携の活発化でOEM車は増加の一途、個性なくなる日本車たち|自動車評論家コラム【オートックワン】
D社はグループ企業にOEMでの販売チャンネルでの販路があるため、消費者へ多少の負担増を見込んでも売れるという算断があるのかもしれませんが、確かに新型イースは魅力ある商品に仕上がっているものの、所詮は小型な分普通車よりどうしても安全面や室内の快適性は劣るのです。
筆者がどうこう言っても、購入するのは人それぞれの価値判断ですので、参考になるかはわかりませんが普通車のメリットを、燃費や価格を削ってまで軽自動車に要求するのは、まだ時期尚早な気はするのです、ただただ政府や自動車大手企業側の国内市場の合理的判断が見え隠れするだけです。
元来世界を見渡しても日本にしかない軽自動車規格の趣旨を考えると、昨今の安全面での課題を普通車並に要求するにはどだい無理があって、燃費や税制・価格面のメリットを、優先できたユーザーなら選択肢とできるジャンルですので、D社のグループ企業内での苦しい立ち位置もあるやもしてませんが、軽自動車という稀有な車種メリットをボカすような振る舞いは、どうかと思いました。
「狭いニッポン、 そんなに急いでどこへ行く」
筆者世代ではかつてこんな交通標語が広まったのを思い出しますが、どうせ軽自動車を選択肢として挙げるのならば、燃費の良い室内の広い1BOX軽自動車で、のんびり夫婦家族、仲間、たとえ一人でも旅気分で、道の駅など週末に楽しむ老後を、選ぶ心のゆとりが大切なのに、世界的にも評価が高まりつつある軽自動車の良さを、スポイルする動きには、残念だなぁ。