くろま流 × NAGOYA式 ブログ

地域産業・観光を広い目線から、東海・名古屋あるあるをリサーチ。

消すな職人技、生き残りの秘策。特集の込める思い

f:id:kromaryu:20160923125626j:plain

 

 私たちの国が世界の中でも今までは技術面で優秀だと評価されてきましたが、情報技術の発達で世界が丸見えになっている現代では、果たして優秀なのでしょうか。

 愛知県は全国でも屈指の製造産業のメッカのひとつでもあるのですが、地元TV放送局でもその優秀な技術を持つ企業を紹介しています。

工場へ行こう!|テレビ愛知

 

 こうした、地場産業に焦点をあてて地場の産業活性化を盛り上げる試みは、おそらく各地のTV局でも実施されているとは思いますが、この番組もドラマ仕立てありで子供から大人まで楽しめる、良い内容になっています。

 さてその中で、テレビ東京ガイアの夜明けを久しぶりに拝見しましたが、今国内で四苦八苦する優秀だった技術文化の現実を見せつけられましたので、内容をトレースしながら地域創生と私達の残すべき技術文化を考えます。

 

 優秀な日本技術の精度

 東京葛飾区 葛飾区 ここに 創業65年の老舗企業があります 北星鉛筆 鉛筆を作っています。従業員28人の小さな町工場ですが、年間2000万本以上の鉛筆を作っていて国内生産の10%を超える数です。

 専務の杉谷龍一さん。ここ40年ほぼ変わらないやり方で鉛筆を造り続けてきました。一番大事なのは芯を入れる為の溝を掘る工程で、板を2枚合わせて覗き込んでいます。

 溝を掘る位置をいかに微調整するのかが腕の見せ所で、道具は長さ5センチほどの砥石を使い 溝を掘る歯を1/1000ミリ単位で研いで調整しています。少しでも中心からずれていると鉛筆で書いている時に、芯が折れてしまうことがあるのです。

 品質を左右する大切な作業。完璧に貼り合わせられた板に接着剤を塗り、芯を入れ もう一枚の板を貼り合わせます。それを切断すれば 鉛筆の出来上がり、職人の腕がよくわかるのが外国製品との比較。北星の鉛筆は当たり前のように芯が中心に来ています。一方中国製の多くはズレていて書いている最中に折れやすいといいます。

 しかし日本の鉛筆は少子化やペーパーレス化の影響で生産量が激減しています。ピークの昭和44年と比べるとなんと7分の1です。まわりの創業者が次々と廃業していく中、北星は生き残りをかけて新製品を発表しました。

 それが「大人の鉛筆」100万本を超える 大ヒット商品です。押し出すとシャープペンシルのような鉛筆の芯が繰り出されるアイデア商品。長年培ったノウハウを活かして開発しました。持ち運びしやすく 鉛筆のように書き方次第で濃淡を出すこともできる、大人のノスタルジーを刺激しました。

 これまであえてシンプルだった大人の鉛筆、それに模様が付いた新製品がラインナップされようとしています、それは和風テイスト。そこにも狙いがありました。これから増加を見込める外国人観光客へ日本の文化と高い技術をアピールするためです。新しい大人の鉛筆は9月末に発売 される予定です。

 

老舗靴メーカーの創意工夫劇

 私達が履いている靴が出来上がるのに、一体どれぐらいの会社が関わっているのか? 皆さんご存知ですか。靴はアッパーとインソール、アウトソールの3つのパーツから出来上がっています。では靴は3つの会社で作っていると言うと、そうではなく、アッパーを作るだけでも材料裁断、それを縫製しますし、インソールはさらに幾つかのパーツに分かれていて、それぞれ別の会社で加工したものを貼り合わせて出来ています。アウトソールでも材料裁断からパーツを着ける会社がそれぞれ在ります。さらに、3つのパーツを組み立てるのが別の会社です。一足作るのに材料調達を含めると10以上の会社が関わっているそうです。

 しかし現在国内で流通している靴の日本製の割合はわずか8%、多くの会社が窮地に追いこまれています。そんな中、日本の靴業界に新風をおこそうと果敢に挑む人たちが居ました。

 

 神戸市長田区この街は日本有数の靴の産地として知られていて、中小ざまざまな関連企業が集まり、パンプスやブーツと言った婦人靴の製造に強みを持っています。

そんな街で話題の靴が手がけたのは地元出身、Jay Jayジャパンの社長安藤友介さん。取り出したのは見た目普通のスニーカー、ジッパーで上と下がくっついている靴ですが、ソールからアッパーを外せると言う靴です。

 着せ替えができると言うキャッチフレーズで、ジョニーアンドジェシーブランドで2015年から発売。価格はソールが6000円から、アッパーは3990円から70種類もあるアッパーを揃える。

 「海外旅行に行くとき、パンパンに荷物を詰め込むが、靴は履いているもの1つだけ。気軽に持ち運びがでくきれば面白い靴の切り口になる」このユニークな着せ替え靴、靴の街長田だからこそできる製品だと安藤さんは言う。

 安藤さんのアイデアを形にしたのが、長田に工房を構える大谷巌さん職人歴30年、図面を見てサンプルを作る専門家です。安藤さんが持ち込んだ新しいアイデアの打ち合わせ。セパレート、切り返しをやってみたいと、大まかにソールと二分割したアッパーのイメージを説明、それを大谷さんはすぐ理解して、即興である材料でものの一時間でサンプルを作ってしまいます。

「形にするには大谷さんがいないと絵にすら書けない」と全幅の信頼を寄せるほど、無くてはならい存在。

 大谷さんも安藤さんにはあ自分と同じアツいものを感じる、と共感し協力歯ていると言う。新しいユニークなアイデアが、世に認められれば、何か起爆剤になるのがこの業界ですと語る。

 靴職人大谷さんが若い安藤さんに期待を寄せるのは、最盛期長田地域で昭和50年代には8000人の従業員を抱えていたが、今年では2000人、生産量もピークの5000万足あったものが、平成過ぎから激減、今では2000万足を切る低迷さだからこそ。

 東京銀座、エストネーションで腕利きのバイヤーの展開するセレクトショップを訪問、接触する安藤さんは着せ替え靴の商談に。対応したのはバイヤーの田中成美さん、メイドインジャパンと言うのはクオリティー的に安心できる、と材料・品質面は合格するが、履き心地に違和感が。つま先が当たるような感覚を指摘され、締め付けられるような感覚あると。つまりジッパーに指が当たらないように保護するウレタンインソールのつま先の、ドーム状の覆いががつま先に当たって違和感を感じたようで、インソールを根本的に見直す課題が出た。

 6月大阪市中央区、ドリーム・ジーピーと言うインソール専門メーカーに即日相談。ソールの試作づくりに、足に優しい設計で知られるメーカーに相談を持ち込んだ。30000人の足のデータを利用して、出来るだけ多くの足に対応できるよう再設計し、かかとのくぼみを深くする事で、足がつま先にズレないよう工夫。その結果つま先にゲートを作らずに済み、ジッパー対策はソール周辺にフチを付け、足を取り囲むようにしてある。

 7月下旬、インソール改良に向け新しいアイデアを大谷さんにサンプルを依頼、それは靴とサンダルを両立させるものだった。

  8月、それを引っさげて安藤さんはアメリカラスベガスへ、リバティフェア、百ものブランドが出展し一万人のバイヤーが集まる見本市に打って出た。新製品は現地バイヤーにも評価は高く、20人のバイヤーと名刺交換し、おおきな収穫を。

 9月、東京新宿店舗エストネーションにも着せ替え靴が展示され、大きく目を引いた。

 

縫製工場を救う取り組み

 ファクトリエでは縫製工場に自社製品を作ってもらう仕組みを考えました。

 通常縫製工場はメーカーから発注受け、それに合わせ服を製造し、メーカーへ納品するが、ファクトリエでは縫製工場と共に製品を企画し工場の名前で販売。工場の自社製品のために自社で設定した適正な価格で販売できるのが強み。

 シタテルは、セレクトショップと縫製工場を結ぶ取り組みをする。

 つまりセレクトショップはオリジナル商品を作りたくても、協力工場を開拓するのが困難だったが、シタテルが仕事を引き受けたい工場を集めて登録し、依頼側の発注を競売する仕組をネット上に作った。

 東京都渋谷区、NUTTEヌッテを立ち上げたステートオブマインドショップと地方職人を結ぶ事業を開始した。かつて個人縫製職人だった社長の伊藤悠平さんが2年前立ち上げた。ヌッテは個人が独自の服を依頼するニーズが多いことを活かすビジネスモデル。

  伊藤さんが会津木綿という生地メーカーの発掘に出るや、ユニークな素材を発掘し、サンプルをネットで登録した職人に購入してもらって縫製に役立てる仕組みも取り入れた。

 これにより地方の優秀なのに仕事が貰えない零細工場や、個人の職人秋田の28年職人歴の縫製職人が、ヌッテに登録しそこから東京アパレルの募集する仕事を請け負ったり、ネットワークを使って富山の個人デザイナーが発注したデザインを、宮城の個人販売者が購入した会津木綿で、縫製し制作費は子供服一着で一万数千円程。

 腕のある職人は、経験を活かし木綿をお湯で洗って縮みを見て、乾燥や歪みを測った上で縫製を開始、実験では一割も縮む事が分かったが、その生地の性質を見極めて型紙を修正したり、ストライプ柄のため縮みで歪んだ柄をアイロンで直してから作るなど、熟練らしさを遺憾なく発揮し、発注者は生地代含め二万円でサンプルを作れた。

 それを富山の個人販売者が、地元の個人販売を協力してくれているショップで展示、お客の反応も上々なのを確かめて、量産を決定するプロセスが出来上がる。地方の子供服ブランドを立ち上げる彼女は、こうしてセレクトショップ事業も展開出来るという。

 ヌッテの伊藤さんは次の一手、染色職人とタッグを組んで、既存服の染直しやオリジナル商品の染色を依頼する事業を展開予定と言う。

 

 

 今でも国内には伝統工芸や精密技術の分野では、誇るべき技術力である「ジャパン・クオリティ」が残っています。しかし日本の若者の目はITや三次産業、大手企業・公務員の分野に目が向いており、技を伝承する職人への関心は落ちる傾向にあるようです。

 もちろんこの傾向をせめることはできませんし、むしろ情報が蔓延する現代では、無尽蔵の情報に振り回される若者の境遇は憂うべきことなのかも知れません。 

 

 ただ、技術力を売り物にしてきた産業分野を主軸にしてきた都道府県では、深刻な技術者不足は死活問題であり、更には地方都市の技術力の活用はプロデュース出来る人材もおらず、このままは消滅を待つばかりでしょう。

 ここで将来のある新しい世代に期待したいのは、技術力の継承もさることながら、今ある「ジャパン・クオリティ」を世界に売り込むコミュニケーション力です。

 

 かつては、日本人材の多くが一次二次産業を主軸にし、地場の学校教育も卒業後は地場産業を継ぐような流れになっていました。その流れが高度経済成長期に都会流出で三次産業が発展、2次三次産業は大手企業の発展を助長してきました。

 その結果日本の高度な技術力は、海外へ届くところとなって今の評価につながっているのは間違いないのですが、中国などアジア近隣諸国へのノウハウの流出で、技術力だけでは競争できなくなっています。

 

 私たちは今後も受け継いた高い技術力とそれを生み出した気質を、どのように継承・活用していくかが問われる時代に入ってくる時代に既に入っている今、教育を通して職業の選択肢の多様性について、伝える術を真剣に学ばねばならないのです。

 筆者の住む愛知県は、文字通り二次産業のメッカであり、製造業無くしては成り立たない自治体ですので、この脅威は決して他人事でないだけに、観光事業に力を入れだそうとする一方で、しっかり地場産業の発展においても、各自治体での役割を見極めて堅実に発展しています。

 

 ガイアの夜明けで紹介されたような課題で注目するのは、こういった日本のお家芸を守る側の人材は多くとも、それを世界のニーズにマッチングさせる人材の不足が、技術伝承以上に深刻だという現実的です。

 日本も豊かになった今なら、若者は海外に目を向けてもっとグローバルな考え方に馴染む機会が多いように思えますが、冒頭でも書いたように実際は安定嗜好に傾いている残念な情勢です。

 

 公務員など本来は一定量居れば良いし、企業の市場拡張には海外進出は肝なのに国内勤務を切望したり、若いうちから安定しているからと内向きに将来を見据えてしまう世相が、更に日本のガラパゴス化を助長しています。 

 

 ものづくり×設計士集団、光学の板橋区再生へ

 WBSでも国内に残存する技術を活かす試みを取り上げていて、区役所内に新設した部所に「板橋区ものづくり企業活性化専門員」として大手で働いた技術キャリア人材を、区が確保し、研究費を賄えない地元中小企業のブレーンとして派遣する制度を紹介しています。

 iPhoneの高性能化で一眼レフに劣らない表現力を使って活動する写真家の例を挙げ、ある写真家が歪みの少ない広角レンズの開発を依頼した中小企業と、その在籍する東京都板橋区がかつて「光学の板橋」を誇っていた時代の活力をとり戻す試み。

 拝見すると、日本の保有する技術がいかに尊く、同時に優秀な技術者の高齢化がいかに危機的なのかを、まざまざと実感できて裏返せば都心の自治体であっても、排水の陣で危機を乗り切ろうとしている姿が、とても印象的でした。

 

 このような「失われる高度な技術・ノウハウ」の維持や、新しいニーズとのマッチングへの課題は、今国内のいたるところで取り組まれようとしているものの、危機感さえ感じない自治体がまだまだ多いことで、国内全体の危機感が希釈な印象がもどかしい現状を、自治体は見直さねばなりません。

 まずは、伝承が間に合わない現実に対しては、失われていく尊い技のアーカイブ(保存・保護)をどのようにすすめるのかを、すぐに具体的にまとめ地場企業や職人に提示すべきでしょう。

 

 今あるIT技術で、あらゆる手段での保存はしやすくなっていますし、ノウハウの数値化・データ化は多くの手間お時間を要するので、人口減少の中で安に公務員を増やすよりも先に、せめて増やすのなら保存に要する人材確保を優先すべきでしょう。

 一旦保存に間に合えば、そのアーカイブはその地域のとてつもない財産になるのですから、そうしたうえで技術者の人材育成を進めても十分間に合いますし、技術をもっている人々の本望でもあるでしょう。

 

 地方が生き残るということは、都市部の生産能力と勝負することではなく、その地域の培っていた得意分野を可能な限り、保存し引き継ぐことに尽きることに、これらの番組特集は、アツく語っているのです。 

 

『職人魂』 杉田コレクション ダイジェスト