地方は埋もれず大志を抱け。西へ東へ飛び出せ地域の国内ベンチャー
経済ドキュメンタリー風なタイトルで記事る今回のテーマは、海外進出に足踏みする地域の小規模・零細企業にエールを送る意味での事例を基に考えます。
最近のニュースで少しづつではありますが、このままでは地域で埋もれてしまいそうな良質の産業・製品が、国内の市場減少化からの危機感から、海外への市場開拓を進めて成功する事例紹介を見るようになりました。
これは大変良い傾向ではあります、ただ実際に携わっている当事者にとっては、その成功までの道のり半ばで足踏みする企業の方が圧倒的に多いのは、周知のとおりです。
そこで、少しでもその突破口を開くための模索をトレースしようというのが、今回のテーマですが、特集などの事例をじっくり拝見すると、共通するのは会社の特徴を絞り込んで、海外のどこで展開していくのかをリスクを取って判断している点です。
どの道このままでは、じり貧になるのは自明の理いわゆる「窮鼠猫を噛む」の状況になる前に、自社の強みと弱みを勇気をもって見直した上で、出せる資金の範疇で自己責任の市場開拓に行動する姿勢が、結果を生み出している現れが、こういった成功のカギと言われるのでしょう。
宮崎県の寿司屋の跡取り村岡浩司さんが目指した、オール九州の穀物をブレンドした、ふわもちで大好評のケーキミックスパウダー。
震災を受けた熊本は黒米、鹿児島はうるち米、宮崎は発芽玄米、大分は小麦、福岡は赤米、佐賀は胚芽押麦、長崎はもちきびという、産地では古くから生産されていた穀物を宮崎でブレンド・製粉している。
だから、その名も「九州パンケーキ」既に東京進出済だそうですが、全国展開するかと思えば、なんと台湾・シンガポールなど海外進出4店舗目だとか。
村岡氏は、中武さん(一般主婦)が元々個人で少量生産して自宅や、地元の道の駅で細々と販売していた、手作りのジャムやシロップに注目し、スカウトした上で、九州パンケーキと一緒に販路拡大展開を目指す。
九州が地理的ハンディを逆手にとって、アジアの中心的な市場開拓を目指すのは、とても理に適う。
典型的な、地方の現状から芽吹く可能性模索の好事例と言って良いでしょうか。
最近のTV番組の特番には好ましい成功事例を追ってくれる番組が散見できて、モチベーションアップにはもってこいです。
では、次の事例に移ります。
ビール業界では小規模メーカーで10種類以上の個性派ビールを生産する、長野県佐久市のヤッホーブルーイングの井出直行氏。
ヤッホー社の起業は、ブームともなった地ビールが全国で起業した時で、小規模の200社の地ビールメーカーが存在したものの、ブームが去って五里霧散した後、生き残ったメーカー。
時代が去って、地ビールがクラフトビールと名を変え、再チャレンジの気運のなかでヤッホー社は、、急成長していると言われながらも、業界競争の厳しさから、リスクを取って市場開拓に出る。
ビールの種類は大きく2種。大手がラガービール主体に対し、ヤッホー社などのクラフトビールメーカーは、エールビールで市場が分かれる。
同社は、国内でのブランディングも成功したことから海外に打って出た。次の販路開拓先は、ビールの本場アメリカ大陸へ。
アメリカは4000社ひしめくクラフトビールメーカーが存在し、米国内でもスーパーの売り場では、5年ほど前から大手のバドやクアーズが隅に押しやられるほどの勢い。(あるスーパーでは600種を販売。)
ワイン感覚で風味も味も個性的なクラフトは大人気な、今最も個性派ビールがアツい市場でもある。
ヤッホー社は、ゆずを使ったビールを米メーカーと共同開発し、一気にアメリカ市場へ打って出る作戦に加えて、国内でも鰹節の旨みだしをフレーバーに使ったクラフトビールも開発し、二本立てでアメリカ人の心をつかんでゆく。
これは、かつて流行った地ビールブームからの脱落した企業の多い中で、自らの個性を見つめ続けて、数歩も突出出来た信念の大切さを教えてくれる事例です。
この位の零細・ベンチャー企業は地域に最も多いのでは無いでしょうか。基本的に個人一念発起し起こした経営がベースですので、この自然薯のような粘り強さは、同じ志しの起業家には大いに励みになるでしょう。
前例の九州のケースと合わせると、熊本の甘夏マーマレード・ゆずと言う、日本を代表する柑橘系フレーバーが隠し味になっているのは興味深い偶然ですね。
地道に地場に眠る特性を足で稼いで探し当て、地道に育てる姿勢は、殊に地域に産業らしい好印象さえ感じました。
さて、最後には中小企業でも大手ですが、伝統のある企業が新たな試みに船出する、リスクを恐れない事例です。
埼玉県深谷市が休遊地に再開発までの一時的に依頼された、ガーデンプレイスを増築、コンテナの持ち運びの良さと、ガーデニングとセットの暮らしをセットの「コンテナガーデン」として販売する戦略。
東京四谷400年の老舗中堅ゼネコンの綿半が、コンテナベースで加工した簡易住宅ユニットと、新規で始めた庭園とセットの自社製品として、生き残りをかける。
緑化商品を開発し、海外展開を目指すそのきっかけにすべく、綿半は北欧イギリスに目を向ける。
毎年5月にイギリス・ロンドンで開催される、伝統的なイベントとして知られる、花と庭園の祭典チェルシーフラワーショーへ。
コンテナと造園技術で作った新しい庭のコンセプトでショーガーデン部門、600社もの事前審査で綿半が残った。東洋と西洋の融合の美、コンテナを額縁に見立てた静の日本らしい落ち着いたガーデンプランを展示。
新しい立体的な壁面緑化棚のデビューでもあり、評価も上々。
この伝統的な権威あるガーデンショー審査で、シルバーメダルを獲得し見事に新商品の市場性を証明して見せた。
経営者はかなりバランスの取れた、私見の持ち主でいらっしゃるようです。
「切り口は、モノ売りでなく価値を売っていく。」
そうです、見る目が狭くなると、人は目先で作っているモノだけに目が行きがちですが、経営者たるもの目線を離して自分が扱っている商品を、モノからサービスへと見方を俯瞰化したことで、自社の得意とするモノを再解釈して、新しい商品を見つけ出した好事例でしょう。
筆者が特番などで拝見した幾つかの事例を垣間見て来ましたが、こうした事例をどう落とし込んで、オリジナル化できるのでしょうか。
筆者の住む身近な地域で考えてみて、愛知ではどうだろうか? と考えた時に、繊維業でにぎわった中京地区、学生服は少子化個性化している中で、少量生産でヒットを狙える、なんちゃって制服はねらい目ではないか? などと思い巡らせることができるでしょう。
また、愛知時計の国内シェアートップの水道ガスメーター技術、日本の水道治水・浄化技術とセットで、アジア新興国への展開は不可能じゃないと思ったりもします。
さらに、一次産業で見ても農村部の広大な遊休地は、注目されながらもこれから規制の大きいドローンを使った管理方法を模索したり、ドローン操作習得の練習場として注目されてもいいかもしれません。
地域の観光において宿泊施設不足が課題になっている今、民泊制度作りに注目が集まるなど、ここ数年来この先も含めたダイナミックな環境変化が見込まれる中での、様々な分野での法整備が待たれる段階にきています。
たとえば民泊で言えば、建築基準法やホテル観光関連法など、積極的に地方自治体に委任すべきところは分散したり、中央集権化しすぎた管理方法を解体し、連絡を密にして管理方法の共有を柔軟にできる約束事を法案化すべきでしょう。
グローバルビジネスの渦に巻き込まれるこの時代に、狭い日本で都心に情報集中化させるメリットは薄れていますが、官公庁の物理的分散より蓄積された情報・ノウハウのITを活用した分散・共有化を急ぐ方が、重要と思われるほど海外の動きが加速度を増しています。
タテ社会の情報集中化は、海外での孤立化を助長するだけです。ヨコまたは並列社会の情報共有化を急ぐのが、もっとも優先すべき課題と見ています。
政府の動きが遅ければ、地域自治体や個々の企業単位でその流れに対応していくしかありませんが、海外に打って出るにはまずITを使った情報収集になれることと、その情報を基に、実際海外へ出向いて足で地域の間隔を肌で感じる行動力が、成功のエッセンスになっているのでしょう。
高齢化が進んでいる職種には酷かもしれませんが、ネットネイティブと呼ばれる若手を呼び寄せて、まずは小さな情報収集を今から初めていかないと、たった5年先の未来をも読めなくなっているかもしれないのです。
めまぐるしく変化する世情を、どのようにして掴んでそこに地域の強みをアピールしていくのかをこれからの地方自治体や地場企業は模索しなければなりません。
今になって、少しづつ現れている成功事例はその類まれなる努力の決勝であり、次に続く新しい可能性への期待に他なりません。
大いに期待を持つこと、そして強い信念をもって荒波を乗り越える広い目を養うことが、まずは道先案内が居ないでさまよっている方たちの当面のテーマになります。
ここでの成功のカギになるのは、如何に数少ない次世代の継承者を育てるのか、という命題ですが、その鍵をまた別の機会に記事リたいと思います。