くろま流 × NAGOYA式 ブログ

東海・名古屋からまちおこしヒント探し始めて、結局国際経済のしくみに行きついた

映画レビュー : アメリカン・スナイパー

本日名古屋市緑区にある、イオンシネマ 大高で見てまいりました。

前評判通りの余韻を感じられるのはなかなか無いのですが、

この作品は間違いありませんでした。

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筆者は2年ほど前に特殊な戦場を舞台にした自作小説を書いていて、それにも伝説の狙撃手が出てきますが、その際狙撃手の性格をいろいろ考えたのですが、

共通するのは計り知れない精神力と人並み外れた集中力、そして冷徹なまでの判断力でした。

優秀であっても狙撃兵は実に地味な存在です。その中で彼らの頑なまでの高尚で純粋な信念がその弾に込められています。

映画でもそれと判るシーンは出てきます(後出あり)筆者のキャラと違うのはカイルは孤高な人物ではなく熱い心を持った普通のアメリカ青年で王道を行く愛国者なのです。

その郷土愛演出は流石テキサス州出身と言われるように、監督の西部劇で培った精神が遺憾なく出ています。(ロデオ大会のレコードキーパー語るシーン)

 

左)主人公演じたブラッドレイとその妻役二人、右)実在の主人公夫婦。キャスティングぴったり!

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俳優ブラッドレイクーパー氏演じる主人公クリスカイルは、幼少から父の影響で正義感と郷土愛に満ちた、弟思いの青年でした。

彼は、自分の生かせる場所を求めシールズで更に心身ともに鍛え上げられます、その過酷な訓練に耐えられたのは、ひとえに祖国を脅かす敵から救いたいという一途な思いだけです。

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帽子のスカルマーク、映画の戦闘シーンに印象的に使われます。

 

やがて彼はシールズの一員として宿敵タリバン打倒のためイイ戦争に4回狙撃兵として派遣され、仲間の軍を狙撃援護する任務に就きます。その間に恋をし、結婚し、長男の誕生、そして娘の父親としてのクリスが描かれていくのです

クリスが結婚してからの夫婦の遣り取り苦悩や、時間が噛み合わない中でも二人が絆を深めようとしていく様もしっかりと描いています。

 

さすが、イーストウッド監督です、

女性が見ても十分共感できます。(キリッ

 

下記2シーンはへぇー!でした。戦闘中にでも心をつなごうと夫婦がセルフォンで会話するんですよ。

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彼の実弟(弟も同じ戦争に参加しています)の精神を壊れていく様を見、チームの仲間が負傷・死亡していく中で彼は、実直にも祖国愛を全うし誠実に仲間を護り、戦闘中も帰国中も妻を家族を大切にしたすさまじく精神的にタフな男として、あの伝説の記録を産むのです。

 

グッときます。(感動1)

 

しかしそのタフな彼とて、4度の戦地で段々と戦争での使命感と、家族の思いの狭間で葛藤していくのです。

そして4度目の戦地で子供を狙撃するかしないかで追いつめられるエピソードが起こります、それが決定打になったのでしょう彼は散々苦しめられた敵側のスナイパーを狙撃して仲間の仇を打てたのを機に家族を選ぶのです。

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オリンピックメダリストの過去を持つ、タリバン側のスナイパーが執拗にカイルを狙うが……

 

彼はこの過酷な中で見事仕事と家庭を両立して見せます、彼だからできたのか?私達でもやればできると言いたかったのか?

それはわかりません。

そんな彼でも、やっぱり人間でした。

 

浮世を離れたように、葛藤するクリス。

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壊れかかる自分を、帰宅する前にバーで一人、必死に今度は自分と闘うのです。

 

くーっ!(感動2)

 

その後は後遺症と葛藤しながら、家族との時間を大切に過ごし父として、夫として自分の生きる道を全うしていくのです。

この、戦争の悲惨さだけではなく、ホームドラマな家族愛も不思議と違和感なく両立させる見せ方は見事で、無理がないです。

 

退役後何かを取り戻そうとするかのような家族とのふれあい、こんなシーンもほのぼのします。

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後日談として、彼は退役後も国を護る軍役者の支援を積極的にされたそうです、最後まで愛国心を忘れず、亡き父の様に愛する者を全力で護り通す気迫のある人だったと思います。

 

監督クリントイースウッドの作品を久しぶりにスクリーンで見ました。

彼の誠実な目で捉えたイイ戦争のリアルさと悲惨さ・無謀さがスーッと入って有無を言わさない凄みは、あの往年のダーティハリーに通じるものがあります。

それに作品中、主人公退役後の家族との団らんで西部劇を匂わす遣り取りがあるのですが、思わずマカロニウエスタンの役者だった監督の名残があって、クスってしまいました。

 

衝撃のラスト

全うに献身的に生きる事は大事なことで、多くの人はそれを疑いません。

ううっ、静かな涙が止まりません。

使命に生きるって所詮その個人の自己満足でしか無いのでしょうか?

人の為に生きるということが、何と難しいことか。

 

最期に、主人公は戦争で多くの人を殺しましたが、なぜ殺人をしたのか?彼は、

神に堂々と人を殺した理由を言える!

そう言っています、それが人にどう映るかそれぞれだと思いますが、

アメリカでは多くの人々の記憶に深く留まっているようです。

戦争は決して助長していいことではありません、しかしその中で何かの為に闘っているのは、心をもった人間です。

でもいかに戦争が悪くても、決して彼らを責める理由にはなりません。

 

この作品でクリントイーストウッド監督は、

尊称通りクリスカイルの人生こそ伝説(レジェンド)と言いたかったのだと思います。